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1982年

蒲田行進曲

蒲田行進曲 蒲田行進曲
松坂慶子 風間杜夫

 

深作欣二監督1982年製作「蒲田行進曲」を紹介する。本作は、松竹と角川春樹事務所が共同製作した、いわゆる角川映画として松竹系で1982年10月9日に公開された。TV局のTBSは製作に名前を連ねていないが、資金不足を補うため、完成前に角川春樹氏はTBSに放送権を売って、放送権料という形で3億円を出資していたそうだ。

 

蒲田行進曲 蒲田行進曲
平田満 原田大二郎

 

こうして企画、製作、宣伝もすべて角川方式で始められた訳で、松竹京都撮影所を使う事なしに、敷地隣にある東映京都の太秦撮影所を使う事を決めた。その東映京都スタジオに、高さ約8m、35段の階段セットを組み、1982年8月13日に"階段落ち"の撮影が行われた。スタントも最初は平田満さん自身がやる予定だったが、舞台も控えていて深作欣二監督が「ケガはさせられない」と言ったため、平田満さんには上から6段だけ落ちてもらい、以降の29段はJAC所属のスタントマン猿渡幸太郎さんが行ったそうだ。

 

蒲田行進曲 蒲田行進曲
平田満、蟹江敬三 松坂慶子、岡本麗

 

松竹の野村芳太郎監督は、自分たち松竹映画の過去を象徴する「蒲田行進曲」というタイトルの映画を、東映出身の深作欣二監督撮られたことに憤り、4年後の1986年に自らプロデューサーとして映画「キネマの天地」を制作した。蒲田撮影所時代を経験している松竹の撮影技師、厚田雄春氏(主に小津安二郎監督作品を撮影)は、本作と「キネマの天地」のどちらも当時の蒲田撮影所の雰囲気が出ておらず、それは無理もないとしながらも、やっぱり物足りないと評している。

 

蒲田行進曲 蒲田行進曲
清川虹子、松坂慶子 松坂慶子

 

【ストリー】
ここは、時代劇のメッカ、京都撮影所。今、折りしも「新撰組」の撮影がたけなわである。さっそうと土方歳三に扮して登場したのは、その名も高い“銀ちゃん”こと倉岡銀四郎(風間杜夫)である。役者としての華もあり、人情家でもあるのだが、感情の落差が激しいのが玉にキズ。こんな銀ちゃんに憧れているのが大部屋俳優のヤス(平田満)。ヤスの目から見れば銀ちゃんは決して悪人ではない、人一倍、仕事、人生に自分なりの美学を持っているだけだ。ある日、ヤスのアパートに銀ちゃんが、女優の小夏(松坂慶子)を連れて来た。彼女は銀ちゃんの子供を身ごもっていて、スキャンダルになると困るのでヤスと一緒になり、ヤスの子供として育ててくれと言うのだ。ヤスは承諾した。やがて、小夏が妊娠中毒症で入院するが、ヤスは毎日看病に通った。その間、ヤスは、撮影所で金になる危険な役をすすんで引き受けた。小夏が退院して、ヤスのアパートに戻ってみると、新品の家具と電化製品がズラリと揃っていた。だが、それとひきかえにヤスのケガが目立つようになった。それまで銀ちゃん、銀ちゃんと自主性のないヤスを腹立たしく思っていた小夏の心が、しだいに動き始めた。そして、小夏はヤスと結婚する決意をし、ヤスの郷里への挨拶もすませ、式を挙げて新居にマンションも買った。そんなある日、銀ちゃんが二人の前に現われた。小夏と別れたのも朋子(高見知佳)という若い女に夢中になったためだが、彼女とも別れ、しかも仕事に行きづまっていて、かなり落ち込んでいるのだ。そんな銀ちゃんをヤスは「“階段落ち”をやりますから」と励ました。“階段落ち”とは、「新撰組」のクライマックスで、斬られた役者が数十メートルもの階段をころげ落ち、主役に花をもたす危険な撮影なのだ。ヤスは大部屋役者の心意気を見せて、なんとか銀ちゃんを励まそうと必死だった。“階段落ち”撮影決行の日が近づいてきた。ヤスの心に徐々に不安が広がるとともに、その表情には鬼気さえ感じるようになった。心の内を察して、小夏は精一杯つくすのだが、今のヤスには通じない。撮影の日、銀ちゃんは、いきすぎたヤスの態度に怒り、久しぶりに殴りつけた。その一発でヤスは我に帰った。撮影所の門の前で、心配で駆けつけた小夏が倒れた。“階段落ち”はヤスの一世一代の演技で終った。小夏がベッドの上で意識を取り戻したとき、傷だらけのヤスの腕の中に、女の子の赤ん坊が抱かれていた。

 

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風間杜夫 蒲田行進曲
蒲田行進曲 蒲田行進曲
蒲田行進曲 松坂慶子
蒲田行進曲 蒲田行進曲
平田満 蒲田行進曲

 

題名: 蒲田行進曲
監督: 深作欣二
企画: 松竹映像
製作: 角川春樹
  プロデューサー:佐藤雅夫(東映)、斎藤一重(東映)、小坂一雄(松竹映像)
原作: つかこうへい「蒲田行進曲」
脚本: つかこうへい
撮影: 北坂清
照明: 海地栄
録音: 平井清重
整音: 荒川輝彦
美術: 高橋章
装置: 三浦公久
装飾: 長尾康久
背景: 西村三郎
衣裳: 黒木宗幸
  美粧・結髪:東和美粧
  スタイリスト:葛西充子
  ヘアー・メイク:アートメイク・トキ
題字: 和田誠
擬斗: 菅原俊夫、上野隆三、三好郁夫
記録: 田中美佐江
編集: 市田勇
現像: 東洋現像所
音楽: 甲斐正人
主題歌:松坂慶子、風間杜夫。平田満「蒲田行進曲」
  挿入歌:中村雅俊「恋人も濡れる街角」
  製作主任:山田吉應
  製作進行:尾崎隆夫
  監督助手:比嘉一郎
  方言指導:落合智子
  演技事務:寺内文夫
  製作協力:東映京都撮影所
  スタント指導:西本良治郎(JAC)
  スタント:猿渡幸太郎(JAC)
  スチール:金井謹治
出演: 松坂慶子、風間杜夫、平田満、高見知佳、原田大二郎、清川虹子、千葉真一、真田広之、志穂美悦子、蟹江敬三、岡本麗、汐路章、高野嗣郎、榎木兵衛、石丸謙二郎、萩原流行、酒井敏也
1982年日本・松竹+角川春樹事務所/ビスタサイズ・35mmフィルムカラー109分

 

 

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